2014年10月8日水曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その27

兵頭二十八師の新刊文庫『日本人が知らない軍事学の常識』が発売されました。この本については、新刊発売時に上梓したエントリで全て書き尽くしているので、「どういう本なのか?」について知りたい方は、以下のエントリを参考にしてください。

軍師にとって初めての軍学入門書『日本人が知らない軍事学の常識』
私家版・兵頭二十八の読み方:その16
私家版・兵頭二十八の読み方:その17

さて、今回の文庫化にあたっての目玉といえば、「付録 著者による旧著の解題」です。385頁から403頁までに取り上げられた著書は――

・大日本国防史――歴代天皇戦記
・新解 函館戦争――幕末箱館の海陸戦を一日ごとに再現する
・あたらしい武士道――軍学者の町人改造論
・陸軍戸山流で検証する 日本刀真剣斬り
・新訳・孫子――ポスト冷戦時代を勝ち抜く13篇の古典兵法
・予言・日支宗教戦争――自衛という倫理
・日本人のスポーツ戦略――各種競技におけるデカ/チビ問題
・名将言行録――大乱世を生き抜いた192人のサムライたち
・人物で読み解く「日本陸海軍」失敗の本質
・新訳・戦争論――隣の大国をどう斬り伏せるか
・東京裁判の謎を解く――極東国際軍事裁判の基礎知識
・比べてみりゃわかる第二次大戦の空軍戦力――600機の1/72模型による世界初の立体比較!
・精解・五輪書
・極東日本のサバイバル戦略

――の14冊。過去の著作についてあまり言及することのなかった兵頭師が、「オレはこういう意図でコレを書いたのだ」と、ガンガン語っているので、これはもうファン必読です。

で、今回の文庫について……と、書こうと思ったのですが、実のところ解題を読んでいて、かねてから考えていた「歴史研究家としての兵頭師の“強み”」について、改めて思うことがありました。というわけで文庫の紹介は過去のエントリにまかせ、今回は手前が考える兵頭師の“強み”について書いていこうと思います。

*念の為に言っておきますが、兵頭師の歴史研究家としての側面は、安全保障を軸にあらゆることに通じている軍学者としての一面に過ぎません。もっと砕けた言い方をするなら、「持ち芸の一つ」ということ。

以下、解題にある一文を引用します。

『一事が万事で、旧来の『五輪書』の解説書は、ほとんど冒涜的なまでに、武蔵の「肉声」の再現に失敗している』
『クラウゼヴィッツがジョミニを強く意識しながらその名をほとんど出していないため『戦争論』が後代の読者にとって難解となったように、また山本常朝が柳沢吉保の出世をいたく羨望しながら「赤穂浪士義挙」を聞いて『葉隠』を書いたという個人事情を察しないとわれわれにとって危険であるように、武蔵が強く意識しながらもわざと名を上げていないことの数々(その出世を最も羨まれた柳生家から、「大工の大名」だといえた中井大和守正清に至るまで)が、細かく注釈される必要があるのだ』(400頁)

そうこれ。歴史研究家としての兵頭師の“強み”は、「史上の人物が実際に考えていたことを忖度し、これを肉声化できる」ことにあるんですよ。
(つづく)

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。

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