2014年2月11日火曜日

『ゴシップガール』のチラ裏:ダンは製作者の“業”の産物

手前が思うに、GGの主人公はダンです。で、GGがどんなハナシかといえば、「田舎者が都会人になろうとあがくハナシ」ですよ。確かにクレジット上ではトップにブレイク・ライブリー(=セリーナ)、次いでレイトン・ミースター(=ブレア)と来るので、「主人公はセリーナであって、恋多き女であるセリーナの恋愛遍歴を見るドラマなのだ」といっても間違いじゃないですよ。ええ。でも、このドラマの主人公は間違いなく“孤独なぼく”であるダンですよ。

これは●●が実は……云々というハナシだからってわけじゃ全然ありません。製作者であるジョシュ・シュワルツのテーマであり“業”に直結するハナシだからですよ。そのテーマってのは、「内向的な青年が、高嶺の花であるブロンド美人に一目惚れされるけど、お互いの立場の違いから恋が成就せずにヤキモキする」ってやつ。これ、クリエイターとしての事実上のデビュー作である『The O.C.』、スマッシュヒットした『CHUCK』にも通じるものなのね。

実際、『The O.C.』、『CHUCK』、GGの大雑把なプロットを並べると、こんな感じになるもの。

・The O.C.=貧困地区であるチノ出身のライアンは、ケンカは強いけど無口で内向的な心優しい少年。いろいろあって高級住宅街であるオレンジカウンティに住むことになるが、そこで隣に住むブロンドの美少女・マリッサに心奪われる。内向的で上手くアプローチできなかったものの、実はマリッサはライアンに一目惚れしていて、結局、二人は付き合うことに。しかし、チノ出身のライアンと、オレンジカウンティ出身のマリッサには、根本的な価値観の違いがあり、結局、二人は一緒になれなかった。

・CHUCK=時給11ドルの店員であるチャックは、生粋のオタクで内向的な青年。とある事件から、ブロンドの美女スパイ・サラに四六時中護衛されることになり、二人は偽の恋人を演じる。内向的で上手くアプローチできなかったものの、実はサラはチャックに一目惚れしていて、結局、二人は付き合うことに。しかし、一般人のチャックとスパイのサラには、根本的な立場の違いが有り、結局、二人は別れてしまう(その後、チャックが自らスパイになることで二人は結婚する)。

・GG=ブルックリン出身のダンは、奥手な文学青年。ある事件を契機にUESのセレブ・セリーナに片思いする。2年後、偽デートを契機にいい関係になる。内向的で上手くアプローチできなかったものの、実はセリーナはダンにべた惚れで、結局、二人は付き合うことに。しかし、ブルックリン出身のダンと、UES出身のセリーナには、根本的な価値観の違いがあり、結局、二人は別れてしまう(その後、いろいろあって復縁。二人は結婚する)。

こんな感じで大体同じハナシを作っているってこと。だから、チャック×ブレアとか、セリーナやネイトの恋愛遍歴とか、ローズ家やバス家を巡る真相とかは、あくまでもサブプロットに過ぎない。メインのハナシは、ダンというブルックリン出身の中産階級の青年が、世界随一の富豪が集うUESの住人になろうとあがくハナシなんですよ。

このテーマってのは、S1E2のクライマックスでダンがセリーナに言ったセリフ――「君だけはUESの人間とは違うと思っていたけど、結局、同じだったんだな」――に集約されているのね。で、このアンタとは住む世界が違うっていう“根本的な価値観の違い”の問題は、S1最終回の別れの理由であり、S2の別れの理由であり、S5最終回の絶交の理由であり、S6後半の葛藤の理由であって、ダンを巡る全ての状況に通底する問題だったりするわけ。もっといえば、ルーファス(=ダンの父)、ジェニー(=ダンの妹)、ヴァネッサ(=ダンの親友)、ジュリエットetcといった田舎者が、最終的にUESから放逐された理由でもある。

ここでようやく本題のダン×ブレア問題に触れていきたいんだけどね。ここまで書いてきた通り、ダンってのは作中における田舎者の象徴なわけ。一方でブレアは、S1E4でダンがルーファスに語っていたように、「UESの嫌なところを凝縮したような女の子」であって、いわば都会人の中の都会人なのよ。つまり、水と油、陰と陽、北斗と南斗etcという感じで絶対に相容れない組み合わせなわけ。『The O.C.』で喩えるなら、「ライアンとサマーが付き合う」くらいに驚天動地なことで、本ッ当にあり得ないカップルなのよ。
(つづく)

*補足――ダンの出身地であるブルックリンは決して田舎ではない。ニューヨーク州の中心地にあり家賃もそれなりに高い。実父のルーファスは、ローリングストーン誌による「90年代の忘れられたバンドTOP10の9位」にランキングされたリンカーン・ホークのリーダー兼ソングライターで、ビルボードTOP10クラスのシングルを何枚か出している。ロフトとアートギャラリーを含めた総資産は、恐らく100万ドルは下らないだろう。実際、イェール大学の奨学金を断られるくらいには裕福なんであって、つまるところ「ハイクラスの中産階級」ということ。それでもなお田舎者で貧乏人とされるのは、数億~数十億ドルの資産を持つ富豪中の富豪が集うUES住人と比べられているため。ダンは度々「ブルックリン」と呼び捨てにされるが、これを日本で喩えるなら、青山学院に通う埼玉県出身の生徒が、山の手の生徒から「おい、さいたま!」と呼び捨てにされるようなものだろう。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。

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