2013年12月1日日曜日

2013年現在、日本一まともな救国策『兵頭二十八の農業安保論』

◆目次
・序章:老人だらけの時代に、国家は老人を安堵させ得るのか?
・第1章:役所の飢餓回避方策はどこが間違っているか
・第2章:いまどき「食料が輸入できなくなる」なんてあり得るか?
・第3章:英vs独「食料封鎖合戦」の教訓(第一次大戦)
・第4章:日本式「統制経済」の失敗(第二次大戦)
・第5章:ニート老人に「予備畑」を管理させることで日本はどのくらい強くなるか
・終章:TPPで守るべきは水田か、「予備畑」か
・まとめ:昔マルクス、今アメリカ(TPPの構図とは)

今週末に発売が予定されている兵頭二十八師の新刊を、一足早く読みました。エントリのタイトルは、そのファーストインプレッションです。

「日本で唯一の軍学者だからって、日本一の救国策なんてのはフカし過ぎじゃね」
「アンタは兵頭ファンだから、贔屓しすぎて目が曇っているんだよ」

と、言われるかも知れませんが、決してフカしではありません。確かに手前は兵頭二十八ファンです。どれくらいのファンかといえば“信者”認定されて誇りに思う――『マッドメン』や『氷と炎の歌シリーズ』は大好きでも、マシュー・ワイナーやジョージ・R・R・マーティンの“信者”かと言われたら即座に否定するけれども、兵頭二十八と落合博満、セシル・スコット・フォレスターは“信者”レベルに好きという――ほどのファンです。でもですね、そういう熱烈なファンだからこそ、贔屓の引き倒しにならないよう常に批判的な目で読むわけです。そういう厳しめな読者の目で読み、かつ、ごくごく控えめに言っても、「やっぱねぇ、救国のアイディアという点では、今現在日本語で書かれている本のなかでは出色のモノだな」と。

手前は20年以上新聞を取らず、2年前からはTVも見ていない――TVを見たのは大河ドラマの第1回とプロ野球中継数回くらい。ああ、そういえば今年の新春大型時代劇は隆慶一郎の『影武者徳川家康』とか。見たい。猛烈に見たい。でも、TVがないから無理――ものの、これまでの人生でそれなりに色々な本に目を通し、最近のニュースや論説もネットで漁っているので、年齢相応の常識や知見はあると思っています。

それこそ日本の将来をどうすべきか? という救国策についていえば、政治家の演説、著作から各省庁の報道資料、学者や評論家の著作やネット論説まで、いろいろと目を通してきたつもりです。財政再建、社会保障、少子化対策、安全保障etcと、ありとあらゆる観点から書かれた多種多様の論説と比べて、兵頭師の新刊が優れている理由は、「高齢化問題について、具体的でかつある程度の説得力あるアイディアを提示している」ことにあります。

この高齢化問題ですが、実は手前も長きにわたって解決策を考えていたものです。大作映画で例えるなら、それこそ「構想20年」というくらいに考え続けてきました。ただ、考え続けたといっても、このテーマでおまんまを食べているわけではないので、真剣に考えぬいたわけではありません。ただ、長きに渡って折にふれて考え、仕事の合間に様々な人々に話を聞いたり、論文や統計資料を読んだりした結果、5年ほど前に一つの結論を得ました。

その結論とは、老人を処分しなければ日本に未来はないです。

要するに「姥捨て山」であり「国策による自殺奨励」であり「ソイレント・グリーン」ですよ。もう少しソフィスティケートされた言い方をするなら「老人撲滅党を作って、高齢者優遇施策を止めよう」となります。ハッキリいって暴論も暴論。現実味ゼロのしょうもないハナシですよ。恥ずかしながら手前は、15年以上に渡って考えぬいても↑のような結論しか得られませんでした。

でも、今の日本の現状を振り返ってみて、このアホらしい結論を笑える人なんて、そんなにいないと思うんですよ。それこそ財務省の平成24年度決算を見て、その膨大な社会保障関係費と年金医療介護保険給付費から、「いまでコレなら20年後に来る少子高齢化のピークには、絶対に破綻しているだろ」と絶望した人であれば、消費税増税を初めとする増税でどうにかなるハナシではないことがすぐに感得できるでしょう。明日から10年間、株価が3万円台を維持するほどの景気になれば、こうした財政的な問題は事実上全て解決できるけど、ゼロサムゲームである現在の世界経済の下では夢のまた夢ですよ。だから国債をバンバン発行して景気をV字回復させて、ジャパン・アズ・ナンバーワンよ再び! みたいな夢に耽溺することもできない。実際、こういう太平楽な論よりは、M資金詐欺の方がまだリアルに感じられますからね

こういう具合に諸論を腐していくとキリがないので、この辺でババっとまとめますが、現在、数多の政治家、官僚、学者、評論家の言う救国の策は、思いっきり乱暴に突き詰めると「無駄をはぶき増税して財政再建→高齢化進展による社会保障費を確保する」「規制緩和(自由経済)or重点投資(社会主義経済)で景気回復し、歳入を増やす→高齢化進展による社会保障費を確保する」ってことでしょう? 

こういうハナシは確かに現実的ではあるんですよ。でも、たとえその論をそのまま政策に反映できたとしても、結局は制度がちょっとだけ効率よくなるだけで、高齢化の進捗を止めたり、社会保障への支出を減らしたりするわけじゃないですからね。厳しい言い方をするなら、根本的な問題を何一つ解決できそうにないという一点で、「何も言っていないに等しい論」ってことなんですよ。

翻って兵頭師の新刊ですが、手前が老人を処分しなければ日本に未来はない――と勝手に思いつめた高齢化問題について、これまで誰も着眼してこなかった切り口から実にアクロバティックな解決策を提示しているんですよ。手前はこれを読めただけで、「数多の救国本より格上」と認定しました。仮に著者の名前が中谷彰宏や勝間和代であっても、考えは些かも変わりません。名前じゃなくて書いてることが優れているんだから。

その是非とか実現性云々のハナシについては、後日改めて書くつもりです。ともあれ、高齢化問題に目を背けずに真正面から取り組み、これまで誰も言及しなかったアイディアを提示している本は、2013年現在の本邦では他にありません。なので、一度でも日本の将来を憂いたことのある人なら、手にとって絶対に損をすることはないと思います。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。

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