2013年11月3日日曜日

DeNAのノリさんに対するやり方は居直り強盗レベル

DeNAはノリさんに対して年俸アップを提示しました。球団が選手に年俸アップを提示するというのはどういう意味か? 球団にどんな思惑があるにせよ、形式上は次のような意味を持ちます。

すなわち「ノリさん君。君の契約期間内での活躍と翌年度の期待値を加味して、我々はこれだけの年俸アップを提示します。翌年度も引き続き我が球団の戦力として活躍してください」です。どこをどう解釈しても「お前はいらない」「君はクビ」という意味はあり得ません。

たとえ球団が、「ノリもおっさんだし来年は今年以上の成績は望めまい。といっても若手が伸び悩んでいるから“保険”として置いておくには格好の選手だ。ただ、バカみたいに年俸アップはできないし、ゴネるならクビだ。どーせクビにしたってノリみたいなトラブルメーカーはどこの球団もとらないだろう。となれば“はした金”で契約できるんじゃね?」と思っていたとしても、年俸アップを提示した以上、「ゴネるならクビ」とは形式上絶っっ対に言えないんですよ。クビにするなら黙って戦力外通告をするか、25%以上の年俸ダウンを提示すりゃいいんですよ。

もちろん年俸提示は下交渉のことであって、本交渉ではありませんよ。球団としては「どんな経緯があったにせよ、第二次通告までにどこの誰を戦力外にするか否かは球団が勝手に決めることであって、文句を言われる筋合いはない」ってことでしょう。実際、ルール違反じゃないですからね。

でも下交渉であったとしても、実際に契約する段になれば現状維持以上の年俸を提示するのは間違いないわけでしょ? 2013年の成績でダウン提示というのはありえないし、仮にそういうふざけた提示をするのであれば、ノリさんは年俸調停を申請して、十中八九ノリさんの希望が容れられる――少なくとも現状維持以上になる――ことでしょう。

こんな具合に現状維持以上の年俸を提示する。もっといえば選手の同意なしに減額できるダウン幅(=ノリさんの場合は年俸1億円以下なので25%以上のダウン)よりも高い年俸を提示する考えがある以上、名実ともに「DeNAはノリさんを戦力外とは見なしていない」って見られるということです。

で、ノリさん戦力外と見なしていないのであれば、たとえ年俸のアップ幅について交渉する余地がゼロだとしても、来年1/9までの保留期間まで年俸交渉を続け、物別れに終わったら年俸調停にかけて白黒つける――というのが、これまでに積み上げられてきた球団と選手間の交渉の慣習でしょう?

DeNAとノリさんとの年俸交渉の行方について、70年以上に渡って積み上げられてきた球界の慣習に照らし合わて見ると、以下のようになるはずです。

①:下交渉で決裂。ただし、DeNAはノリさんに対して現状維持以上の評価をしている。すなわち戦力外とは見なしていないので、本交渉で年俸を提示する。

②:DeNAとノリさん、年俸アップ幅について交渉を重ねる。

③:越年交渉の結果、決裂する。

④:ノリさんは年俸調停を申請する。

⑤:調停はノリさんに不利な結果となった。

⑥:ノリさんは調停を結果を受け入れず任意引退扱い。メジャーリーグはもちろんのこと独立リーグにもいけず、ひっそりバットを置く。

以上は最もこじれた場合にどうなるかをシミュレートしたものですが、いずれにせよ②~⑤の段階で妥結すればDeNAで現役を続けることになり、最後まで妥結しなければ選手にとっても最も怖い任意引退の道が待っているということ。

こういう風に、球団にとっては「戦力外通告をしない選手に対しては、誠実に交渉を続けなければならず、好き勝手にクビは切れない」というリスクがあり、選手にとっては「戦力外通告されていないにも関わらず、コネにゴネまくれば強制的に引退させられる」というリスクがあるわけです。こういうことで球団と選手間のパワーバランスをとっているわけですよ。

もちろん下交渉段階で、「このアップ幅が飲めないならクビな!」なんて乱暴な交渉をしてはいけない――なんてことは、野球協約や統一契約書や選手会との取り決めで明文化されているわけではないですよ。

でもねぇ、球団の地位を濫用して、「(中村らの交渉は)あくまでも特例。みんながみんな、そうはならない」(高田GM)なんてことをほざくのであれば、これはもう居直り強盗みたいなものであって、そんな強盗まがいの交渉を許すなら、選手側の権利をより露骨に拡大――極端なハナシ、選手にタンパリングを認めてもいいくらい――しなきゃ、球団と選手とのパワーバランスがとれないでしょ。だいたいGM自ら「特例」なんて言ってるんだから、これはもう語るに落ちるってやつでね。てか、こういう交渉はダメってことを明文化しなきゃダメじゃね? もっといえば選手会はもっと迅速に対応すべきことだと思うね。

翻って、昨日から話題になっている井端弘和選手への仮借なきダウン提示について。これは明らかに「君を戦力とは見なしていない。納得できなければ自由契約にするからどこにいっても結構。もちろん調停にかけてもかまわんよ」というだけのハナシであって、どうのこうのという感想はない。ただまぁ、「今の時代、功労者だからといって5000~6000万円も貰える時代じゃないのだなぁ」という感慨は抱いたけどね。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。

追記:怒りに任せて書いたのでわかりにくいところが多々有り、ちょっとリライトしました。

<参考>
●NPBと選手会とのあいだで決められた戦力外通告期間のルール
・第一次通告は10/1からレギュラーシーズン翌日まで。
・第二次通告はクライマックスシリーズ終了翌日から日本シリーズ終了翌日まで。
・12月までにトライアウトが行われ、12/2にコミッショナーが保留選手名簿を公示する。ここから漏れた選手は自由契約となる。

●統一契約書
・球団は2/1から11/30まで契約により選手を拘束できる(第3条:参稼報酬)
・契約期間及び保留期間中はトレードできる(第21条:契約の譲渡)
・球団は翌々年1/9まで契約更新する権利を保留できる(第31条:契約の更新)
・球団は年俸1億円以上の場合は40%、1億円以下の場合は25%まで選手の同意なしに翌年度の年俸を減額できる(第31条:契約の更新)
・上記減額幅を超えた契約更新を選手が拒否した場合、球団は契約更新する権利を喪失する(第31条:契約の更新)

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