2013年6月14日金曜日

ルール違反を承知で「違反球」を作らせていたんじゃないか?

昨日書いたハナシをもう少し詳しく書きます。

日本プロ野球(NPB)で使われる「公式球」は、公認野球規則により反発係数が下限0.4134から上限0.4374と定められている。つまり製造時の誤差は0.024ポイントまで認められているということ。

これを前提に考えてみると、メーカーはどのようなボールを作るだろうか? 納品先から特別な注文がない限り、メーカーは、反発係数の目標を中央値となる0.4254に設定して製造するだろう。納品するボールの反発係数は、モノによって前後0.012の幅でブレる可能性があるが、多くのボールは反発係数0.4254に近いモノとなるだろう――。

といっても本邦のスポーツメーカーは、反発係数の誤差として0.024もの幅をとらなければならないほど杜撰じゃぁありませんですよ。

だって、ミズノ、ゼット、アシックスetcといったスポーツメーカーは、それぞれ反発係数の誤差0.024の幅の中で、「上限に限りなく近いボール(=飛ぶボール)」と「下限に限りなく近いボール(=飛ばないボール)」を作ってきたわけでしょ。実際、統一球が導入されるまでは、「中日のホームでは飛ばないボールを使う」「巨人のホームでは飛ぶボールを使う」ということが行われていたわけだから。

もちろん飛ぶボールのロットの一部に飛ばないボールが混ざっていたかも知れない。でも、使われたボールと過去の成績との相関関係を見れば、総じて高い精度で飛ぶボール、飛ばないボールが製造されていたことは疑いようがない。もちろん、これらのボールが「違反球」であったという報告は、少なくとも過去20年間では一件も上がってきていない。

ということは、「日本の大手スポーツメーカーは、公認野球規則で定められている反発係数の誤差0.024の幅のなかで、飛ぶボール、飛ばないボールを自在に製造する能力があった」といえる。

つまり、昨日のハナシの繰り返しになるけど、ミズノが不作為に「違反球」を製造・納入したことは考えがたいってこと。逆に言えば、ミズノはNPBからの指示により反発係数の下限に限りなく近いボールを製造・納入していたってことですよ。

実際、ミズノのサイトでは、統一球について以下のように謳っている。

来季からプロ野球12球団に納品する統一球の仕様について(2010年8月23日)

>来季から全球団に納品するボールには、新たに開発した低反発ゴム材を用いることで、限りなく規格値下限の0.4134に近づけて製造していきます。

さて、この一文からわかることは以下の2点。

①ミズノは自社の硬球製造能力について、反発係数の誤差0.024(前後0.012の誤差)を気にしないほど正確であると自負している。

②誰に言われたかわからないけど、ミズノは敢えて反発係数の下限に近いボールを製造しようと考えている。

過去の実績と製造ラインの能力から鑑みて、「どう生産しても反発係数で誤差0.012以下に収める自信がある」ってことであり、その能力をもって、「誰かの意向により反発係数の低いボールを製造する」ってこと。

で、以上のことをアタマに入れて以下の記事を読んでみるとですね、実にどうも合点のいかないことが出てくるわけですよ。

NPBが情報を隠ぺい 統一球問題(中日スポーツ、2013年6月12日)

>NPB・下田事務局長によると、公式試合球の反発係数については年に数回の検査で確認しているという。両リーグのアグリーメントでは「試合球の平均反発係数は0.4134~0.4374」と定められているが、昨年は下限を下回る検査結果が何度もあり、最も低い平均値は「0.408」だったという。つまり、想定以上の「飛ばなすぎるボール」になっていたということだ。

最も低い反発係数の平均値で0.408。これは下限である0.4134より0.0054低い。

反発係数の誤差0.024から見れば“誤差の誤差”に見えるかも知れない。でも、これまでミズノ初め国内のスポーツメーカーは、この0.024という“幅”を目一杯使って飛ぶボール、飛ばないボールを作ってきたわけでね。仮に飛ぶボール、飛ばないボールの誤差を目一杯とった場合、中央値の0.4254から前後0.012の誤差の更に半分となる0.006になる。↑の0.0054に限りなく近い。

「だったら製造過程での誤差で済むハナシじゃね」って?

いえいえいえ。ここで挙げた目一杯の誤差0.006ってのは、反発係数の下限目標を「下限ギリギリの0.4134」ではなく「下限ギリギリより0.006余裕を見た0.4194」と設定した場合のハナシですからね。つまり、下限ギリギリより0.006高めにしておけば、製造段階で反発係数の誤差が前後0.006あっても「違反球」にならないだろう――という、随分緩い仮定でのハナシってこと。

つまり何が問題なのかというと、0.024という反発係数の幅の中で、長年に渡って飛ぶボール、飛ばないボールを作ってきたミズノが、↑のように緩く仮定した0.006に近い幅の誤差を、「反発係数の下限ギリギリより更に低い値で出していた」ということ。これは取りも直さず、「ルール違反になることを承知で、反発係数の下限ギリギリのボールを製造していた可能性が高い」ってことです。

で、ただの“出入り業者”であるミズノが、ルール違反になることを承知でボールを作り続けていたとは考えられないんですよ。だいいちそんなことをしてもミズノにとって一銭の価値もないわけだし。ってことは、「反発係数の下限ギリギリでボールを作れ!」という指示があったことはまず間違いないわけで、それがNPBであり加藤良三であったことも、十中八九間違いない……ってことまで書いてきてきて、あまりにも長くなってしまったことに気づき、ここでひとまず打ち止め。

統一球が加藤の肝いりで始められたこと、WBC第3回大会を見据えて敢えて飛ばないボールの導入を目指したこと、ミズノのコンプライアンスと出入り業者の苦悩……etcと、書きたいことは山ほどあるんだけどね。

ともあれ手前は、韓国は仏像を返還すべきであると思う。

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