2013年4月4日木曜日

長嶋ありきではなく松井ありきである:その1

*国民栄誉賞のハナシです。以下、陰謀論なので眉に唾をつけて読みましょう。

まず、今回のハナシを巡る大前提を確認しましょう。

2013年春時点において、この賞を最も欲しがっているのは誰か?
答えは長嶋茂雄です。

同様に、最も忌避しているのは誰か?
答えは松井秀喜です。

理由は以下の通りです。

・長嶋が欲しがる理由:受賞によって、生涯において人気以外の全てで負け続けた王貞治と、肩を並べられるから。
・松井が忌避する理由:受賞によって、プロ生活において人気と実績の全てで負け続けたイチロー選手(引退後の受賞確実)と、死ぬまで比較され続けることが確定するから。

ミスタープロ野球である長嶋茂雄は、あらゆる点で日本一の野球人でなければいけない――。これは手前が勝手に想像している長嶋の心中です。しかし、人気こそ空前絶後だったものの、新人時代から圧倒的な成績を残し、打撃三冠タイトルを13個も獲ったにも関わらず、実力では全ての点で王貞治に負けてしまった(ちなみに王の打撃三冠タイトル保持数は33個)。それだけでも自分を許せないのに、あろうことか王のためだけに「国民栄誉賞」なる国家表彰制度が創られてしまい、実力以外の点でも一歩先んじられてしまった。

しかも、王と古賀正夫くらいが受賞者であれば良かったものの、衣笠祥雄に千代の富士、高橋尚子ときて、挙句の果てには女子サッカーチーム(なでしこジャパン)まで受賞者に連なるとなれば、「王に負けるのは仕方がない。しかし、オレはQちゃんや千代の富士以下なのか? えっ? 今度は大鵬!? 『巨人、大鵬、卵焼き』の『巨人』はオレのことだぜ!」と思ったに違いありません(注:あくまでも都築の想像です)。

こうなると、王のことは置いておくとしても、「ミスタープロ野球=日本スポーツの顔」として、受賞しないわけにはいかない。てか、オレに賞をくれ! と、切実に願ったであろうことは間違いないでしょう(注:繰り返すようですが都築の想像です)。

しかし、長嶋が国民栄誉賞を欲しがっているからといって、政府にしても世間にしても、いまになって長嶋に賞を授与する理由はないわけです。だって、選手としては40年以上前に引退しているわけですから。加えて、監督としては凡庸な成績しか残していない。

唯一、授与される機会があったとすれば、「シドニー五輪で金メダルを獲ったとき」ですが、長嶋自身は病気に倒れ、代理監督の中畑清も銅メダルしか穫れなかった。もう、この時点で長嶋に対して国民栄誉賞を生前授与する機会はなくなっているんですよ。今年、大鵬が受賞したときに、「なぜ、生前に授与しなかったのか」と批判されましたが、この批判を受けても長嶋に生前授与することはなかったと思います。

一方、松井秀喜はなぜ忌避するのか? といえば、一言で言うなら「受賞資格がない」からです。

長嶋については、いまになって授与する理由こそないものの、「日本プロ野球を国民的スポーツへと押し上げた」という功績は、受賞資格に十分値します。それこそ「記憶に残る男」という奴です。

この「記憶に残る男」の功績は、文字通り空前絶後のものであって、他の誰にも真似のできるものではありません。実際、実績では野村克也と落合博満は長嶋よりもハッキリ格上ですが、彼らが日本プロ野球を“作った”わけじゃないですからね。彼らとて、長嶋が“作った”日本プロ野球という舞台でおまんまをいただいているわけです。もし、長嶋がいなければ野村も落合とも、生涯収入、講演料、著作の販売部数とも1ケタ少なくなっていた可能性すらあります。

しかし、松井はといえば、彼には大変申し訳無いけれども「記録にも記憶にも残らない男」でしかない。

メジャーリーグに初挑戦したわけでもなければ、そこでタイトルを獲ったわけでもなければ、NPB時代に日本記録を残したわけでもない。もちろん野球ファンのあいだでは、「高校時代に5連続敬遠された怪物」「ヤンキース21世紀最初の黄金時代に4番を打ち、世界一に導いた男」として永遠に記憶され続けるでしょうが、一般大衆は↑のような功績もサッサと忘れてしまうでしょう。

で、このように「受賞資格がない」にも関わらず国民栄誉賞を受賞してしまったらどうなるのか? 現役時代に人気、実力、カリスマ……etcと全ての点で及ばなかったイチロー選手と、死ぬまで比較され続けることになるわけです。

イチロー選手が引退した後、国民栄誉賞が授与される(=受賞を拒否しない)ことは、99.9%確かなことです。その後はどうなるのか?

「事実上、初めてメジャーリーグに挑戦し、2度もノーヒットノーランを成し遂げ、かつ米球界での殿堂入りの可能性も十二分にある野茂英雄すら受賞していないのに、なぜ、松井ごときが?」
「イチローと松井、同じ国民栄誉賞受賞者だけど、松井の方の成績ってクソだよね」
「いまパワプロ2043年度版やってんだけどさぁ、松井って本当に凄かったの? パラメーター結構しょぼいんだけど」

と、後世までとやかく言われ続けるわけですよ。とりわけ、現役時代に殊の外ナーバスになっていた「イチローとの比較」についても、これまでは「中~長距離砲と単打マンで役割が違うから」みたいに受け流せていたのが、今後は「同じ国民栄誉賞受賞者」という枠で堂々と比較されてしまうわけで……。

ということは、他の誰よりも松井自身が承知していることでしょう。だからこそ、「国民栄誉賞なんて絶対に貰いたくない。てか、即断ってやるわ!」というのが、松井の本心なのですが(注:言うまでもないことですが都築の想像です)、それでも断らなかったのはなぜなのか?

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