2013年1月20日日曜日

*読書メモ:2100年の科学ライフ(その2)

・「テクノロジーの四段階」。大衆テクノロジーは、たいてい4つの基本的な段階を追って進化する。この進化は紙、水道、電気、コンピュータにおいて見られる。第1段階では、テクノロジーの産物が貴重なので、厳重に守られる。紙について見ると、発明されたばかりの第1段階では、エジプトにおいても中国においても一本の巻物を祭司が厳重に保管し、一般には流通しなかった。

・グーテンベルクの印刷術が考案された第2段階では、「個人用の本」が生まれた。グーテンベルクの登場まで、ヨーロッパ全土にあった本は3万冊だけだった。それが1500年には900万冊に増え、盛んに知の発酵を促し、ルネサンスを触発した。

・1930年頃、紙の進化は第3段階に突入し、1枚当たりのコストはごくわずかになった。こうして「個人用の書庫」が実現し、一人で何百冊も本が持てるようになる。紙はありふれた品物となった。現在は第4段階にあり、紙は装飾的な表現をするものとなっている。都会のゴミで最も多いのは紙だ。つまり紙は、厳重に守られる品物からゴミへと進化したのだ。

・同じことが水道にも当てはまる。第1段階にある古代、一つの井戸を村全体で使うほど貴重だった。この状態が数千年続いたが、1900年代初頭になると家庭に水道が導入されはじめ、第2段階に入る。第二次大戦後には第3段階に突入し、安価になって中産階級にも普及した。今日は第4段階にあり、噴水やディスプレイとして世界を飾り立てている。電気も右に同じ。そして現在、第4段階にある水と電気は、ともに公共サービスとなっている。どちらも安価でたくさん消費され、家に届いて使われる電気や水道の量がメーターで計測されている。

・コンピュータも同じ段階をたどっている。50年代は一台のメインフレームを100人の科学者や技術者が共有していた。80年代にスタンドアローンのPCが普及して第2段階に突入。現在はインターネットによりひとりの人間が無数のコンピュータとやりとりできる第3段階にある。

・したがって、将来コンピュータは第4段階に入り、世界がコンピュータで飾り立てられるようになり。コンピュータという言葉そのものが消え、都会から出るボミの大部分がチップになる。PCやスマホはチップとして空気のような存在になり、計算はクラウドで行われるようになろう。だからコンピュータの進化は謎ではない。すでに紙や水道、電気などが歩んで踏み固めた道をたどっているのだ。

・ただし、全ての技術が第3、第4段階に到達するとは限らない。たとえば機関車。19世紀に機関車の登場で第1段階に入り、20世紀に自動車の登場で第2段階に入ったが、電車や自動車自体、ここ数十年であまり変わっていない。変わったのは細かい点で、エンジンパワーの向上やインテリジェント化などだ。このように第3、第4段階に到達できないテクノロジーは、細かい改良が施される。

・テクノロジーの進化は、われわれの働き方をどのように変えるのだろうか? 答えは単純な問いかけにより、部分的に明らかにできる。ロボットの持つ制約は何だろうか? 人工知能には少なくともふたつ、基本的な障害がある。パターン認識と常識だ。だから未来にも残っている仕事は、主にロボットにはできない仕事――このふたつの能力を必要とする仕事――となる。

・ブルーカラーの仕事の多くはなくなるかも知れないが、一方で盛んになるものも多くある。パターン認識を必要とする、反復的ではない作業を行う労働……例えば、ゴミ収集員、警察官、建築作業員、庭師、配管工は、将来も仕事があるだろう。一方、ホワイトカラーの仕事では、在庫確認や計算に携わる仲介的な仕事は、全てロボットに奪われる。下級公務員、仲介業者、経理、銀行の窓口係などだ。

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