2012年10月2日火曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その18

**「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリでは、日本で唯一の軍学者である兵頭二十八師の著作を、独断と偏見を持って紹介します**

兵頭流軍学のテキストとしてはもちろんのこと、近未来の戦争のあり方を占う軍事本としても、昨今流行している“尖閣ネタ本”としても深く読める、兵頭二十八師の新刊『北京は太平洋の覇権を握れるか――想定・絶東米中戦争』。

◆目次
●プロローグ――米支の権益地域としての絶東
●1章:なぜ太平洋の支配権が二強国の争点となるか
●2章:米支開戦までの流れを占う
●3章:想定 米支戦争
・1、サイバー戦
・2、「開戦奇襲」はスパイ衛星を狙って第一弾が放たれる
・3、航空戦の様相
・4、機雷戦の様相
・5、陸戦を占う
・6、核が使用されるシナリオ
●4章:米支戦争に日本はどうつきあうのが合理的か
●エピローグ――開戦前の宣伝に屈しないために

なぜ、米中戦争なのか? 軍師はこのように書いています。

「世界帝国だったスペインの凋落いらいこのかた、グローバルなナンバーワン強国は、『ナンバー2』の強国の隆盛を歓迎せず、傍観せず、放置もしない。かりに現在、『ナンバー2』が軍事力を伴わない経済大国にすぎないとしても、その国民の先進大国意識と技能ポテンシャルとは、一夜にして、ナンバーワンを脅かす軍事資源に転換され得る」
(中略)
「米国指導層は、中共との『友好親善』の余地などないことを、ようやくに悟った。口先で『米支共栄』が謳われることはあろう。だがそれは、外交会場を粉飾する時間稼ぎのマヌーバ(政治術策)であると、どちらも承知している」(15~16頁)

すなわち、いまや二大強国となったアメリカと中国との対立は避けられない――という視点から、両国対立の未来について、考え得るあらゆる可能性を論じきっています。

*なお、上記引用の「ただの経済大国でも、すぐに軍事大国になる可能性がある」というハナシについて、直近の好例としてはワイマール共和国→ナチス・ドイツが挙げられるでしょう。

その内容について、改めてとやかく書くつもりはありません。1600円という値段の割には中身のギッシリ詰まった本――300頁もないので、「ナナメ読みすれば2~3時間で読み終わるナ」と読み始めたら、読破するまでに7時間かかったでござる――なので、Amazonでポチるなり、近所の図書館で借りるなりして読んでください。

さて、新刊を読んで改めて気づいたことがあります。といっても、中国軍の弱さとか、近未来におけるサイバー戦争のあり方とか、儒教国家における約束と密約の違いとか、本の中身にあるようなことではありません。同じ出版社(草思社)の既刊である『日本人が知らない軍事学の常識』と新刊に“共通”していることと、今夏から論文やTV出演、blogなどで念入りに言及している“ファクター”から思いついたことです。

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