2012年8月27日月曜日

なぜ、公式晩餐会ではフランス料理が供されるのか?

都内在住某氏に送ったメールですが、書いているうちに大長編となったので、時候の挨拶とか仕事のハナシとか個人情報とかを省いた上で転載します。

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(前略)
日本だけでなくアメリカでもイギリスでもケニアでもインドでも、公式晩餐会といえば原則的にフランス料理です。「日本なら懐石料理、インドならカレーでもいいんじゃね? てか、現地の料理の方が美味いでしょ」となってもおかしくないのに、どういうわけか昔からフランス料理であり続けていることには、ちゃんとした理由があります。

なぜか? 一言でいえば、「誰が食べても、どこで食べても、同じマナーで済む」からです。じゃぁどうして「誰が食べても、どこで食べても、同じマナーで済む」ようにする必要があるのか?

例えば日本では、「茶碗は手に持って食べる」のが正しいマナーであり、「茶碗を持たず犬食いする」のは悪しきマナーであり失礼に当たります。翻って韓国では、↑のマナーは正反対に解釈されます。同じようにインドでは、「右手で手づかみで食べる」ことが多いようですし、もしかしたらアフリカor南米の奥地には、「足で食べるのが正しいマナー」という部族がいるかも知れません。つまり、国によって正しいマナーは全然違うということ。

で、5カ国くらいが集まって親睦会をやろう! となったときに、「なぜ、こんな料理を出すのか? わが国を侮辱したいのか!」「犬食いしやがって! なんて下品な奴らだ!」みたいなことで険悪になってしまうことを避けるために、公式な外交の場においてはフランス料理を供し、フランス料理のマナーで食べ、歓談しましょう――となったわけです。

*なぜフランス料理なのかといえば、ざっくり言うと、「ヴェストファーレン条約を締結したときに、一番強かった国がフランスだったから」です。ヴェストファーレン条約とは、ヨーロッパのほぼ全ての国が参戦した30年戦争の講和条約で、この条約を巡る会議が近代外交の基礎(=「いきなり戦争する前に話し合いをしようぜ」とか「宗教が違っても内政干渉はなしな」といった、いまに通じる国際法の基本が成立した)となったため、この会議での慣習が後々まで外交儀礼の慣例として使われるようになったということ。もし、スペインが強国のままだったら、今頃は公式晩餐会で必ずパエリアが出されていたのかも……。

この「公式晩餐会ではフランス料理を供する」に類した慣例を集積したのが外交儀礼(外交プロトコル)です。プロトコルといえばインターネットでありTCP/IP――の方が通りが良いと思いますが、実際、通信プロトコルに喩えた方が理解が早いかも知れません。

同じ手順、同じ書式で通信したりプログラムを書いたりしているからこそ、日本語圏にある手前の自宅のモニターで、インターネットを通して、英語圏のCNNの動画が見られるように、外交においても同じ言葉遣い、同じ礼式で対話するからこそ、違う言葉、違うマナーの国の代表同士が穏健に話し合えるわけです。もし、外交プロトコルがなければ、席次、国旗の掲揚方法、挨拶の仕方……etcで「それは失礼」「これは侮辱」みたいなことになってわやになるだけでなく、「席次が失礼だった」みたいな言いがかりをつけて戦争に持ち込まれる可能性もありますからね。

なので、外交官の仕事とは、「この外交プロトコルを徹底的に遺漏なくマスターして、外交の現場で失礼がないようにする」ことにあります。これは世界各国共通のことで、北朝鮮の外交官も韓国の外交官も、外交プロトコルは徹底的に遺漏なくマスターしていることは100%間違いありません。

と、ここまでが前フリですよ。でも、お尋ねの件に答えるには、どうしても必要なんでね。

さて今回、韓国政府が野田首相の親書をそのまま返送した件ですが、これは外交プロトコルから見てあり得ないレベルの非礼なんですよ。

もちろん外交プロトコルを熟知しているわけではないので、「赫々云々こういう慣例のアレを破っているから非礼」といった感じで具体的に指摘することはできません。ただ、↑で書いたとおり、外交儀礼というのは元々「国と国の代表が穏健に話し合う」ために出来たものです。今回、野田首相は、文字通り「国と国の代表が穏健に話し合う」ことを目指し、さしあたって「今回の件、ウチとしてはこう考えているんだけど、どう思うよ?」という手紙を公式に送ったわけです。

もちろん手紙の内容は、韓国にとっては面白くないものだったでしょう。でも、外交の現場では、もっと不穏当な話し合いが行なわれるんですよ。それこそ、「オレっちオマエのこと気に食わないから戦争すっから」みたいなことも、外交プロトコルに則って宣言されることもあるわけです。それでもなお、外交プロトコルに則って粛々と行動するのが外交官の仕事である――ってことは、全世界の外交官がわきまえていることです。実際、宣戦布告した矢先に大使同士がステゴロで殺し合いなんてことになったら、両国間で和平を結ぶことなんて金輪際できないですからね。

話を戻すと、外交プロトコルに則って出した親書。しかも、国政の最高責任者の名前で出した手紙をですね、そのまま突っ返すということは、「オマエの国とは今後一切話し合いをするつもりはない!」と宣言したも同じなんですよ。要するに韓国は「大統領の名において日本と公式に国交断絶を宣言した」ってことです。

日本の外務省が、親書を返しに来た韓国外交通商省の職員を門前払いにしたというのは、政府&外務省が韓国に見せた“惻隠の情”でしょう。だって、もし素直に受け取ったら、国交断絶を受け入れるってことになるわけですから。そういう政府&外務省の気持ちはわからなくもないけど、外交というのは外交プロトコルに従って粛々と進めることが第一義なので――慣例を無視して柔軟に対応してしまうと、「アノときは柔軟に対応したのに、なぜ今回は杓子定規に対応するのか!」となってしまうので――、本当は門前払いにせず、素直に受け取るべきだったんですけどね。実際↑の通り、韓国の外交官だって外交プロトコルは重々承知しているので、これも完全に確信犯なんですよ。

それでもなお、韓国がここまで非礼な対応をしてきたというのは、日本に対する甘えがあるってことです。もう少し小難しい言葉で言うと、「アジア的外交」を期待しているということ。ここでいう「アジア的外交」とは、「華夷秩序を基にした国家序列を意識した対応」であり、「賄賂で高官を篭絡することで万事解決する」ことです。

で、これまでの政府&外務省は、この「アジア的外交」にズブズブに嵌っていたわけですよ。つまり、「華夷秩序をベースに韓国の面子さえ立てておけば、金もくれるし女も抱ける」ってこと。そんなに簡単に篭絡されるものなのかと思うかもしれませんが、儒教国家である朝鮮と支那の歴代国家は、2000年に渡って賄賂で高官を篭絡することを続けてきてますからね。多分、賄賂の渡し方は世界一洗練されているんじゃないでしょうか。

加えて、「アジア的外交」の言辞に頷く日本の政府高官の多くは大アジア主義者で、日本は儒教圏の一国家であると本気で考えている人が少なくないんですよ。その最もわかりやすいケースが、鳩山由紀夫(=東アジア共同体)です。でも、日本は明治維新以来、儒教は一切合財捨てて自由主義を国是にしてますからね。だからこそ日本は、国と国は対等という外交をしているし、公的な階級はなくしたし、何を言おうが書こうが自由だし、どんな仕事をしてもOKだし、どこに引っ越してもいいし、いきなり政府に私財を没収されることもない――という住みやすい国になっているわけですよ。

*この辺のハナシは、手前が尊敬している兵頭二十八氏の著書『予言 日支宗教戦争』に詳しいです。もしよろしければ後日持って行きます。

なので、日本は儒教圏の一国家ではないし、これから儒教圏の一国家に戻るような“退歩”があってはならないと思うので、「アジア的外交」に惑わされるような大アジア主義者は全員●ねばいいのに! と思ったりしているのですが……。それはさておき、日本は国是として自由主義を採っているので、韓国の対応に付き合う必要は全くないわけです。

ここでようやくお尋ねの件についてお答えしますが、「なぜ、日本は外交プロトコルに沿って粛々と対応するだけで良いのか?」といえば――

・外交とは、昔からの外交的慣習の集積である外交プロトコルを忠実にこなすことにある。

・儒教国家である韓国は、日本に対して「アジア的外交」を仕掛けてくるが、これに乗る必要はない。なぜなら、日本は儒教圏の一国家ではないから。

・なので、どんな絡めてや奇手を繰り出してこようと、日本は外交プロトコルに沿って粛々と対応するだけで良い。

――ということです。

こう書くと「何を穏当な!」と思われるかも知れません。でも、そこまで穏当なハナシでもないんですよ。この原則に忠実に行動するのであれば、相手が国交断絶を申し渡してきたら、こっちも粛々と国交断絶の手続きをするってことになるわけですからね!
(後略)

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