2012年7月17日火曜日

『尖閣喪失』、ネタバレ雑感:その2

以下、ネタバレありです。一応警告しときますよ。

『尖閣喪失』の結論を読む限り、大石氏は「日本及び米国は、中国とのチキンレースに負ける」と考えているようです。そもそも「尖閣諸島に日本人を置く」ことはできないと見ています。

「やはり、事前に陸兵を魚釣島に派遣して基地の一つも設営しておくべきでしたな。たとえ挑発行為と受け取られても」
「いや、それはできなかった。どんな政権でもね。それをやったら、二〇一〇年よりもっと酷い事態を招いていたでしょう(後略)」(363~364頁)

で、その理由を突き詰めた上で大雑把にまとめると、「中国がアメリカ経済(=世界経済)を人質にとっているから」となります。細かな理由については、ネタバレの中のネタバレになってしまうので、敢えて省きます。

この辺のハナシをすると、「そもそも、水もねぇ、食料もねぇ、ガソリン灯油も足りるわけねぇ~♪ みたいな中国が経済を盾に出来るのか?」とか「小説では国民の不満をそらす一手として尖閣奪還作戦にGOサインを出すけど、これでチキンレースやって国内経済がガタガタになったら元も子もないじゃん」とか「百歩譲って『脅せば降りる。ウチがダメになって困るのは日米だよ』という確信があっての賭けだとしても、その割には得られるものが少ないよね。てか、そこまでやるなら南沙諸島でしょ」とか、いろいろと言いたいことが出てくるのですが、この辺は全部措いておきます。

そのうえで、「中国がアメリカ経済(=世界経済)を人質にとっている」ために日米は中国とのチキンレースに負けるという結論が是か非か? というハナシについて、手前なりの結論を言えば、「いやぁ、経済ごときが盾になるわけないじゃん!」となります。

・理由1:米国は曲がりなりにも文明国なんであって、露骨な条約破りはできない。
・理由2:世界経済の混乱は、予期しないアクシデントをキッカケに起きるもの。尖閣を巡る動きは、戦争発展まで全ての経緯を世界の投資家が注視することになる。つまり、戦争の結果起きるバッドイベントは織り込み済みなので、多分、リーマンショックのように市場が大混乱することはない。
・理由3:英国と並ぶ同盟国である日本のケツ持ち(=日中戦争の講和の仲介)すらしないということが明らかになれば、世界中で反米活動が活発化することは確実。結果、米国の貿易コストは跳ね上がり、その経済はますます弱体化する。

パッと思いつくだけでも↑のような感じの答えがスラスラ出てくるわけですが、実際に大石氏と対面で議論をすれば、この答えに対する再反論もスラスラ出てくるのでしょう。当然、手前もその再々反論もスラスラと……多分、水掛け論になると思うので、↑のような主張をしつつも、ここでは敢えて大石氏の主張が正しいと認めましょう。実際、大石氏の描く“不愉快な未来”を考えておけばこそ、それを打開するための一手を考える意味もあるわけですから。


・追記:元外交官・孫崎享氏 「日本人にとって受け入れがたい事実だが、尖閣諸島は日本固有の領土ではない」…ツイッターで

……いやぁ、工作員ってのは本当にいるんだね。

>もしも尖閣諸島で中国との軍事衝突が起きるならば日本は確実に敗北するだろう

ないないない。仮に米国が参戦しなくても、中国はどの離島にも一人の兵隊すら上陸させられません。『北斗の拳』で喩えるならジャギとケンシロウくらいの実力差があるもの。


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