2011年7月19日火曜日

落×駒:スウェーと体重移動に違いはあるのか?(その2)

*以下、特に断りがない場合は、駒田徳広の言葉は『問いただす“間違いだらけ”の打撃指導』(ベースボール・マガジン社)』、落合博満の言葉は『落合博満の超野球学・バッティングの理屈①』(ベースボール・マガジン社)からの引用です。なお、上記書籍からの引用部分の末尾には(駒・●頁)、(落・●頁)と表記します。

第1章で「体重軸」と「運動軸」についてふれましたが、ここではバッティングにおける体重移動について述べたいと思います。「体重軸」は運動が起こる前の軸足を中心とした軸。「運動軸」は体重軸がステップした前足の方向へ移動する中で生まれる軸です。
僕が提唱する運動軸を中心にしたバッティングとは「うまく体重移動をしながら、その中の回転運動でボールを打つ」ということです。この運動こそが、バットとボールが当たったときの圧力をもっとも高めるバッティングだと思っています。
(駒・58頁)

という、高らかな宣言から始まる「第2章:キーワードは『軸』と『支点』」。前回と同じように、この章より要旨を抜粋してみます。

・「構え」に当たっては、軸足のつま先を投手方向に対して垂直及びやや内側に向ける。捕手寄りのヒジはしっかりと上げ、決してワキを締めない。


・ワキが締まるとヘッドが出にくくなり、振り遅れ、手打ちになる。「構え」でワキを締めている選手でも、「トップの位置」ではヒジが上がっている。だったら最初から空けていた方が理にかなっている。


・ミートポイントを迎える前に回転運動をしない。体が開く原因になる。回転運動のタイミングを計る「タメ」が必要。それには「足を上げて打つ」のが有効。


・足を上げ、積極的に前へ体重移動することで、下半身を使ったバッティングができる。多少タイミングを外されても、バットでうまくボールをさばける。しっかりとステップせず、体重移動が不十分では、軸回転だけのスイングになりボールに力が伝わらない。

ワキを空けるか締めるか? も面白いポイントなのですが、そこに言及すると収拾がつかなくなるので、ここでは体重移動についてだけ見ていきます。ここで読書メモ風に抜粋した駒田の主張を言葉通りに解釈すると――

・足を上げて積極的に前へ体重移動することが肝要。

――となります。つまり、落合がバッティングの“諸悪の根源”と見なしている「前方にスウェーする」ことに近いスイングをすると読み取れます。

果たして駒田の言う「体重移動」は、落合の言う「スウェー」と同じことなのでしょうか? それとも全く違うことなのでしょうか?

もう少し駒田の言葉を拾ってみましょう。

運動軸とは一連の体重移動の中でバットに最大限のパワーを伝える状態の体の軸です。
この軸がどの場所で起こるかは個人によって千差万別です。自分がもっともパワーを伝えることができるポイントは本人しかわかりません。
運動を起こす軸が軸足に近い人もいれば、前足に近い選手もいます。その中間くらいの選手もいるでしょう。
(駒・66頁)

駒田はこのように書いた上で、「運動軸が軸足に近い選手」の代表例として城島健司選手、松井秀喜選手を例示。一方、「運動軸が前足に近い選手」の代表例としてイチロー選手を挙げています。そのうえで――

しかし、3者とも回転する軸はぶれていません。回転軸がしっかりしていることも一流選手の証なのです。
自分の運動軸がどの地点にあるのかを認識することは難しい作業です。
たとえば、前に突っ込んでなかなか打てない選手がいます。その選手はおそらく運動軸が体重軸に近い所にあるのだと思います。一方、泳いでもボールをバットにうまく乗せることのできる選手は前足方向に運動軸があると言えます。
(駒・67頁)

――と、回転軸の“最適解”は人それぞれで、やってみなければわからないと結論しています。

正直、自身の理論を考究しきれていないように思えますが、ともあれ「運動軸が捕手よりにある選手以外であれば、前方にスウェーする打ち方が有効」と主張していることは間違いないと思います。
(つづく)

落合博満の超野球学〈1〉バッティングの理屈(注:Amazonリンク)

0 件のコメント:

コメントを投稿