2011年5月2日月曜日

『Veronica MARS』には感心した:その2

DVDパッケージや公式サイトのプレビューを見る限り、「どこが本格的な探偵モノなんだ、コラ!」と思われることでしょう。実際、手前もパッケージを見て、「ああ、学園モノ&超人捜査モノね。それはもうおなか一杯だから」と敬遠していたものですが、実際に見てみたら、スタイルからハナシの展開まで、気持ちイイくらいに古典的探偵モノをやっていて、すぐにハマりました。

まず、第1話から第3話くらいまでに連発される主人公のモノローグ。これは明らかにレイモンド・チャンドラー(というかフィリップ・マーロウシリーズ)へのオマージュですよ。父親が探偵になった事情なんかも「まんまマーロウやんけ!」という具合。このほかにも作品の細部で、古典的探偵モノのオマージュをちりばめている――あからさまでないところが好ましい――ので、古典的探偵モノにハマったことのある人であれば、こういうスタイルだけを見ても、「うん、いいんじゃね!」と思うこと必定です。

で、ハナシの展開も、昨今流行に流行っている「エルロイ風の“陰惨フレーバー”を振りかけて社会派ぶったミステリ」では全然なくて、語り口はあくまでも豊かで、起きる犯罪も牧歌的なんですよ。舞台が高校で主人公が女子高生という制約のなかで解決できる事件が起きているので、強盗や殺人はハナから対象にならないということもあるんですが、よくよくハナシを吟味している見ると、なかなかにヘヴィな事情があり……というのが基本パターンです。

古典的探偵モノをベースにしているため。ミステリ部分については、「なるほど、これが伏線ね」みたいに結構バレバレだったりするのですが、そこに至る背景の描写(ヘヴィな事情)には思い切り力を入れているようで、初見であれば、「なるほど、こう来るか!」と感心するものと思います(手前的には、3話の展開とオチに膝を打ちました。あの脚本は本当に上手い!)。

あと、声を大にしていいたいのは、主人公の声の素晴らしさ。カワイイけどドライ、ドライだけどハスキーではない独特の声質――強いていえば「のび太の声をやっていた小原乃梨子を思いっきり若くしたような声」という感じか?――が実にイイ塩梅で、もうモノローグを聞いているだけでどんぶり飯三杯はいけるほどイイものなんですよ。手前は海外ドラマや洋画をDVDで見る際には、ほぼ全てのケースで吹き替えにしてみていますが、こと、この作品だけは字幕で見ています。吹き替えの声優もかなり上手ですが、クリステン・ベルの地声が聞けなければ、作品の魅力の半分くらいは台無しになりますからね。

まぁ、シーズン通してみれば瑕疵もいくつかあるんですが(一番ダメなのは、シリーズ通しての大事件の犯人が、1~2話をみただけでは絶対にわからないこと)、それ以上に美点の多いドラマなので、「『Glee』とか『24』もいいけど、もう少しマイナーで面白いのもみてみたい!」と思ったら、迷わずレンタルDVD店に駆け込んで1巻を借りると幸せになれるはずです。



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