2010年12月30日木曜日

2010年下半期に読んだ本・ベスト5

一足早い感じですが、「下半期に読んだ本&今年読んだ本ベスト5」を上げてみたいと思います。「今年発売」じゃなくて「今年読んだ」というところに注意してください。

というわけで、早速発表。

第五位:ロボット兵士の戦争(日本放送出版協会)

◆読書メーターの感想:極めて良質なルポルタージュ。ロボットが引き起こしている軍事革命の現状と将来について、ありとあらゆる角度から深く切り込んでいる。全ての章が読みどころで、値段以上の価値がある大作。

*詳しくはblogにある通り。かなりの大部なので人によっては読み下すのに苦労するかも知れませんが、中身は案外読みやすいです。ロボットは、軍事だけでなく産業界から日常生活まであらゆる場面に普及することが確実視されているので、将来のことについて何がしかの情報を得たい人にとっては必読の本といえるでしょう。



★第四位:時の地図(ハヤカワ文庫)

◆読書メーターの感想:いやぁ面白かった。ヴィクトリア朝末期のイギリスにおける「魔界転生」(最近の人には「スーパーロボット大戦」の方が通りが良いか?)というか、自分にとって好きなものだけがてんこ盛りで出てきておなかいっぱい大満足――という感じ。ラブレターとかアクションシーンとかの描写も何気に凄い。

*ここ数年に読んだ新刊SFでは抜群に面白かった。ただ、この面白さは日頃本を読まない人にはなかなか伝わらない類のものでしょう。ある程度、SFを読んでいる人であれば、娯楽小説やSFのお約束、仕掛けをことごとくなぞったかと思えば裏切り、裏切ったかと思えばなぞり、そうかと思えば突き抜ける――という具合に、読んでいて鼻面を引きずり回される快感を味わえるはず。タイムトラベルかヴィクトリア朝に興味がある人ならば、絶対に面白く読める本です。





★第三位:一万年の進化爆発 文明が進化を加速した(日経BP社)

◆読書メーターの感想:これまでの人類進化の常識を180℃覆す問題作。人類の進化は現生人類以降、ほとんど止まったと考えられているが、実は文明誕生から今日までに飛躍的に進化している――という結論を遺伝子解析から鮮やかに導き出していく展開は実にスリリング。現生人類が誕生した頃の人口(数十万人)と現在の人口(数十億人)を比べても、近世から現代においては遺伝子の選択、変異の機会が桁違いに増えているという論理は、単純だが説得力がある。しかし、そこから導き出される種々の結論は、大論争を呼ばずにいられないだろう。

*詳しくはblogにある通り。画期的な論考にして言葉通りの問題作。この主張に対して科学的にどのような反論が加えられるのか? そこに興味があります。



★第二位:ロボトミスト 3400回ロボトミー手術を行った医師の栄光と失墜(武田ランダムハウスジャパン)

◆読書メーターの感想:455pの大部だが、あまりの面白さに徹夜して一気読み。科学的評価と臨床上の問題解決のジレンマ、科学の進歩と倫理の“足枷”、そして栄光と失墜。いろいろ考えさせられる深いテーマもさることながら、何より<ひとりで歩く猫>であるウォルター・フリーマンのキャラクターが実に魅力的。彼に焦点を当てて映画化すべきだろう。もっとも、倫理的な問題が大きすぎて不可能な話だろうが。

*今回取り上げた5冊のうち、唯一オススメするのを躊躇する本。ロボトミーのことを知らない人、医療や科学技術について全く興味のない人にとっては、単に冗長でわかりにくく面白くない伝記でしかないですからね。ただ、ロボトミー、医療、科学技術について少しでも興味のある人であればベラボーに面白く読めるはず。現在ではほぼ“黒歴史”に近く、一般向けの読み物がほとんどない「ロボトミーの解説書」としても、たった一人で良くも悪くも歴史に残る医療技術を“発明”した科学者の伝記としても、超一流の本です。



★第一位:サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か(日本放送出版協会)

◆読書メーターの感想:「面白さ」という点では、今年読んだ科学書のなかで随一。並行宇宙とひも理論の解説は、これまでに読んだあらゆる科学書のなかで最もわかりやすかった。熱力学三法則の“言い換え”に典型的だが、こうした喩えの上手さと“補助線”を引くセンスの良さは、他のライターや学者にはない強力な武器だろう。用語解説、原注すら「読んでいて面白い」ところも素晴らしい。

*感想については上記以上に付け加えるものはありません。SF(小説、映画、TVシリーズ、マンガ……etc)好きの人は、騙されたと思って読んでみてください。



年間ベストワンは『競争と公平感―市場経済の本当のメリット』(中公新書)。以下は、その日の気分によって順位が変わるかなぁ。

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