2010年5月18日火曜日

宮崎県に米軍基地を置かないと、口蹄疫の対応しないぞ

とか言ってそうだ。それどこじゃないのに。

口蹄疫拡大阻止へ国が対策本部 経済支援などに1千億円

何をいまさらって感じだけど。少なくとも県知事が赤松農水相に支援要請した4月28日には、このくらいの体制を作っておくべきだった。この物言いは、決して後だしジャンケンじゃない。その時点で「殺処分1000頭超という過去最悪の状況」にあったからだ。少しでも危機意識を持ったトップがいれば、この程度の判断ができたはずだもの。

今回の<赤松口蹄疫事件>について、真偽が確認できない話――アンテックビルコンSの確保を巡るよもやま話(消毒薬なんて工業用のものでいいんだから、モノや量自体は国内に十分ある)や、3月末に病状悪化した牛がいたなど――を廃した状況を振り返ってみると、こんな感じになる。

・4/9:都農町の和牛1頭に口腔びらんなどの症状を確認。
・4/16:同じ症状の牛が見られると報告。
・4/17:立入検査の実施により、別の2頭にも同様の症状があることを確認。
・4/19:口蹄疫の疑似疾病の検査では全て陰性を確認。口蹄疫が疑われる。
・4/20:都農町の和牛3頭に口蹄疫の感染が疑われることを確認、公表。口蹄疫防疫対策本部を設置。当該農家の半径10kmを移動制限区域。半径20kmを搬出制限区域に指定。
・4/23:都農町の1頭について口蹄疫と確定。
・4/25:新たに4頭の感染が確認。殺処分予定1108頭(過去100年で最多)。
・4/27:都農町に隣接する川南町の豚5頭で口蹄疫感染の疑いが確認。
 同日:東国原宮崎県知事、赤松農水相、谷垣自民党総裁に支援を要請。
・4/28:当初感染例から約70km離れたえびの市で、牛に口蹄疫感染の疑いが確認。これにより移動・搬出の制限区域が鹿児島県の一部にも拡大。
 同日:自民党谷垣総裁が現地訪問。
 同日:FAO(国際連合食糧農業機関)が「アウトブレイク」と発表。
・4/29:山崎農水副大臣が来県。現地入りはせず。
・4/30:感染報告が12例に拡大。殺処分予定4369頭。移動・搬出制限区域が宮崎、鹿児島、熊本に拡大。
 同日:赤松農水相、外遊へ出発。
・5/1:宮崎県、自衛隊に災害派遣を要請。
・5/5:東国原宮崎県知事、非常事態宣言。
・5/8:赤松農水相、帰国。その足で栃木県佐野市を訪問。目的は、民主党・富岡よしただ議員の後援会発足の祝辞を述べるため。
・5/10:赤松農水省、来県。現地入りはせず。

以降、政府は今日まで手をこまねいていた。

いまさら言っても詮のないことだけど、4/25時点で過去最悪の事態であることがわかっていて、1000頭以上の殺処分も確定していたんだから、この時点で速やかに殺処分を行なっていれば、その後の状況はかなり変わっていた可能性が高い。もっとも、「殺処分対象が10万頭レベルから数万頭レベルで抑えられた」とか「もしかしたら宮崎県だけで口蹄疫を終息できた」とかいうレベルだけど。今朝のニュースでは、もう11万頭を超えてるからね。現時点で隣県に飛び火していないのが奇跡みたいなものでしょう。

4/27に知事が支援要請に来ているわけだから、このタイミングで自衛隊派遣を逆提案(知事に派遣要請を出すよう促す)という手もあった。1000頭以上の牛を殺して、埋めて、消毒できるような、人員、資材、ロジスティクスを持った組織なんて自衛隊しかない。口蹄疫のことを少しでもわかっていたら――病状が悪化するに従って撒き散らされるウイルスの量も飛躍的に増える――速やかに殺処分する、予防的に殺処分することがいかに大切かってことがわかりそうなものだけど……。

でも、自衛隊派遣については、「自衛隊の協力は、国民に不安を与えかねないので、慎重に考えたい」(舟山康江大臣政務官。このあとデンマークへ外遊。信じらないほど無責任!)と悠長なことをいってたわけで……。

百歩譲って、こうした議論を後だしジャンケンとするとしても、4/28にFAOが「アウトブレイク」を宣言し、自民党総裁が(パフォーマンスとしても)現地訪問しているにも関わらず、畜産行政の最高責任者が満を持して外遊に行くなんてことが許されていいわけはない。この赤松農水省の無責任振りに比べれば、えひめ丸事件における森首相の対応には一分の利――少なくともゴルフ場に行く決心をした時点で、えひめ丸の事故は全く予測できなかった。もちろん、事故を知ってから3ホール回ったことは批判されるべきだろう――があったとさえいえる。

ちなみに、2000年の口蹄疫は、こんな感じでした。

・3/12:宮崎市で風邪状の症状のでた牛が発見される。その後、口蹄疫が疑われる症状が発症。
・3/21:宮崎家畜保健衛生所に通報。農水省は動物の隔離、施設消毒などの措置の実施を指示。
・3/24:国の専門家を現地に派遣。23日から実施していた血清検査で口蹄疫ウイルスの抗体を発見。
・3/25:口蹄疫の疑似患畜と診断。口蹄疫防疫対策本部を設置。疑似患畜発生農場を中心として半径50mの地域の通行遮断。同半径20kmの地域の移動制限。同半径50kmの地域の搬出制限を実施。
・3/26:疑似患畜の殺処分、埋却、消毒終了。近隣2戸3頭全頭も自衛的に殺処分。
・3/28:周辺農場の立入検査で採血。異常は認められず。
・4/1:農水省家畜衛生試験場での血清検査の結果、3頭に口蹄疫ウイルスの抗体を確認。
・4/2:再度立入検査、血清検査を実施。
・4/3:当該農場で9頭中6頭に抗体を確認。疑似患畜と診断。
・4/4:疑似患畜9頭全頭を殺処分、埋却、消毒終了。
・4/9:高岡町の農家で3/29に採血した血清を検査した結果、口蹄疫ウイルスの抗体の存在が疑われる。
・4/10:当該農場で疑似患畜16頭を殺処分、埋却、消毒終了。
・4/23:空気伝播の可能性が極めて低く、感染力も従来知られているものに比べて低いと考えられることから、半径50mの地域の通行遮断を解除。同半径20kmの地域の移動制限を10kmに変更。
・5/2:移動制限地域をすべて解除。

(以上、「わが国に発生した口蹄疫の特徴と防疫の問題点」(独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所九州支所臨床ウイルス研究室 津田知幸室長)を参照)

口蹄疫防疫対策本部を設置するまでは、10年前とほぼ同じ。口蹄疫か否かを確認するためには、どうしても10日前後かかるということなんでしょう。自民党政権であっても共産党政権であっても、ここまでの流れは変わらなかった可能性が高そうに思えます。つまり、初動の失敗という議論は正しくないということ(ただし、一部で噂されているように「3月末に病状悪化した牛がいた」ということが事実であれば、話は変わってくる)。

それにしても、こういう防疫政策は「やり過ぎて悪いことはない」んでしょうね。去年の新型インフルエンザ騒動も終わってみれば羊頭狗肉だったし、防疫政策の無駄だってとっても多かった。でも、こうしたことは終わってみて初めてわかったこと。仮に強毒性だったらどうなっていたか? その良い実例が今回の<赤松口蹄疫事件>だったんじゃないのかと思えてならないなぁ。

追記:【ニコニコ動画】バットマンが口蹄疫問題で農水大臣を取り調べた模様
うまいなぁ。これほど人をむかつかせるなんて。

追記その2:口蹄疫、「生き地獄」の現場から~好転の兆し見えない宮崎県川南町から町職員が報告
現地職員のレポート。必読。

0 件のコメント:

コメントを投稿