2010年5月22日土曜日

私家版・兵頭二十八の読み方:その6

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**「私家版・兵頭二十八の読み方」のエントリでは、日本で唯一の軍学者である兵頭二十八師の著作を、独断と偏見を持って紹介します**

ここ最近、新聞やTVは朝鮮半島の話題で持ちきりです。

曰く、半島がきな臭くなってきている
曰く、戦争が起きるかもしれない
曰く、米国、中国の出方が注目される

今回の事態がどのくらい深刻なレベルのことなのか? 正直、手前には何とも判断がつきません。タイのクーデター騒ぎと同じように“アジアの風物詩”的な感じもしないではないし。ただ一つ明らかなことは、マスコミの論調が以前の半島危機と同じように、「他人任せ」であることでしょうか。ミサイルが飛んだときも、核実験をやられたときも、相変わらず、「米国はこう動くだろう。中国の今後に注目」というように。

こうしたマスコミの論調は、そのまま大多数の国民の考えであり、多くの政治家の考えでもあります。そのことは米国、中国、韓国、ロシア、北朝鮮も見透かしているわけで、つまるところ、日本がスペック(経済力、軍事力)で見れば“大国”であるにも関わらず、誰からも“プレイヤー”として見なされていないってことですよ。

そんな“プレイヤー”に成りきれない日本が、国民は飢え、しょぼい兵器しか揃えていないにも関わらず、立派な“プレイヤー”として米中を相手にタメを張っている北朝鮮のことをバカにできるのか? むしろ学ぶべき点もあるんじゃないのか? という超斬新な視点から、日本人に必要な精神、心の持ちようを説いた本が『逆説・北朝鮮に学ぼう! ヘタレの日本に明日はない』(並木書房)です。

「軍人や役人が、政権政党のしもべとして、確実に統制されているか? 軍人や役人の秩序紊乱や抗命や独走や涜職に対して、政権が銃殺刑を厳格に適用できているかどうか? また外国のスパイも、確実に処罰されるかどうか?」
「これができる国は、小国といえども、かならず一方の大国からは、地域の一勢力として評価され、中距離核ミサイルによる武装すら、是認されるのである」(2頁)

北朝鮮にあって、いまの日本には何一つないことです。

「いや、あっちは共産主義……というか金王朝による完全独裁国家で、こっちは民主主義国家だからね。統制だの何だのといっても条件が違うっしょ」

だったらイスラエルは? アメリカは? フランスは?

結局のところリーダーに、リーダーを選ぶ国民に<ガッツ>――独立心であり、武侠精神であり、つまるところ「ただじゃ殴らせねぇ!」という気概――があればできることであって、これがなければ高級官僚がのさばり、スパイが暗躍し放題になり、与党政治家が敵国のエージェントになってしまうということです。

「じゃぁ、どーすりゃいいの?」

という問いに兵頭師は、北朝鮮の軍事・外交戦略を独自の視点で紐解きながら、タイトル通り「逆説として北朝鮮に学ぶ」という形で答えています。

・なぜ、朝鮮総連に破防法を適用できないのか?
・なぜ、国民をいわれなく誘拐されても国軍が動けないのか?
・なぜ、パチンコ屋が脱税したカネが北朝鮮に流れていってしまうのか?

これらの問題の本質的な答えは、同書のなかで明快に書かれています。是非、手にとって確かめてみてください。

では、いまの北朝鮮は、米国にとってどんな“プレイヤー”なのか? これについて兵頭師は、このように書いています。

「北鮮の人民を金王朝の圧制から解放してやっても、その結果、北鮮の人民が、今の韓国人のようになるだけとすれば、アメリカに何のメリットがあるのか? どうせ、恩を仇で返されるだろう――とアメリカ人は計算しています」
「そんなところに、北朝鮮政府から、<オレたちは極東のイスラエルになってやるよ!>とアメリカ政府へ耳打ちがあったとしたら……?」
「アメリカ合衆国が、北朝鮮を北東アジアに地域限定した軍事的パートナーとすることが、アメリカ有権者にとって『安全・安価・有利』に権力を維持・増進する方途であるならば、とうぜんそれを選択するのが、『政治』というものなのです」(122頁)

端的にいえば、米国にとっては最大のライバルである中国を押さえ込む“尖兵”にしようとしている(すでに尖兵にしている)という見方です。一見、奇をてらった説――ぶっちゃけて言えばトンデモ説――に聞こえるわけですが、この、一見“トンデモ”に聞こえる説を、米国や中国の政治決断やヘンリー・キッシンジャーの『核兵器と外交戦略』を敷衍しながら論証していく過程は、実にスリリングで説得力があります。

追記:落合博満監督、500勝おめでとうございます! それはそれとしてこの記事の最後の4行に注目。予定稿で行くはずが……どうしてこうなった! ってとこっすかねぇ。それにしても脈絡なさすぎ。てか手抜きだろ、これ。

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