2010年5月27日木曜日

野球部は暴力で強くなるのか?:その1

「殴る蹴るのシゴキがあったチームが、これまでの大会で高い実績を残している」ことは確かだ。その一番の好例が、90年代初頭までのPL学園野球部だろう。

『PL学園OBはなぜプロ野球で成功するのか?』(ぴあ)は、野球部OBで元巨人投手の橋本清が、桑田真澄、宮本慎也選手、立浪和義、清原和博、木戸克彦、金石昭人、吉村禎章、片岡篤史、野村弘樹、前田健太選手という10人のOBと、黄金期の監督だった中村順司にインタビューした本だ。OBのインタビューを読むと、その結論は明らかだ。「暴力前提の厳しい寮生活のお陰で強くなれた」となる。

・立浪和義
「PLは全員寮だから、一年生にとって、息を抜く場所はまったくない。朝起きてから寝るまで。寝ていても、目覚まし時計が鳴る直前に起きないといけないっていうプレッシャーもあったし。とにかく、24時間、『はぁ~』と息をつける場所はなかったね」(53頁)
「PLの厳しい環境に耐えてきたからやろうね。野球に揉まれてきたから。やっぱり、厳しいところで耐えると、厳しい場面で力が出せると思う」(65頁)

・清原和博
「PLの卒業生はみんな勝負強いって言われた時代があったけど、そういうところでメンタルが鍛えられたっていうのがあるよな。野球の失敗より、どつかれるほうが怖いっていう世界やったからね」
「寮での生活はフィジカルとメンタルのトレーニングとしては、そうとう役立ったと思う。でも、お金をいくらもらっても、PLの一年生をもう一度やるのは無理やね。あの1年間はいい思い出でもあるけど、心の傷として残っている」(72~73頁)

・木戸克彦
「一年生の頃はとにかく、毎日の寮生活のことで精一杯だった。三年生のための食事の用意、掃除、洗濯、マッサージに追われるから、当然だけど、寝るのは深夜。それでいて朝は早いし、練習も厳しいから、授業中は居眠りすることもあったね」
「でも、今思えば、寮生活で教えられた躾けが、ものすごく役に立ってるよ。~~中略~~団体に入ったら、団体のなかで生活するための躾けや規則がある。それを親よりも厳しく教えられた」(91~92頁)

・吉村禎章
「全部が苦しかったよ。特に入学してからの1年間は寮生活が本当に苦しいし、練習もきつい。すべてのことがすごくつらかった」(131頁)
「45歳になった今でも野球で家族を養えているのは、原点にPLの野球があるからだね。寮生活をしながら野球をすることで、忍耐力や気遣いといったものを学ばせてもらった。野球を通して人間性が鍛えられたと思う」(134頁)

・片岡篤史
「殴ることは当然よくないけど、やっぱり気合を入れるのは大事やと思うよ。今のこどもは、自分が殴られたことないから、ムチャクチャしばいてしまうでしょ。『痛み』をわかっていたら、ムチャなことはしないと思う。殴ることがいいことだとは言わんけど、『殴られてもやる』くらいの根性がなかったら、一発勝負のスポーツで勝つことは難しい。勝負の世界はそんなに甘くない」(153頁)

アマでもプロでも一流~超一流の実績を残したOBが、「オレがこんなに強いのも、寮生活で殴られたから」と言ってるのだ。何の実績もない手前が、これに正面から異議を唱えることは野暮なことかも知れない。

それでも敢えて言わせてもらうなら、「それは殴られたから強くなったのではなく、単に死ぬほど練習したから強くなったのでは?」ともいえるのでないだろうか?(つづく)

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