2010年4月8日木曜日

懐が暖かくなったら参加したいねぇ

『FREE』を読み終えました。冒頭のFREE黎明期のエピソード――ゼリーの誕生、キングジレット――にはハートを鷲掴みにされたんだけど、その後のお話は、「ネット時代の経済について良く整理しているなぁ」と大いに感心はしたものの、それ以上のインパクトはなかったかなぁ。

「単にオマエの読解力が足りないんじゃね?」といわれればそれまでのこと。理解力に欠けることを認めるのは恥ずかしいことだし、適当な屁理屈をつけてわかった風な口をききたくもあったりする。でも、一読後の感想を虚心坦懐に書くと、「ようするに『損して得とれ』ってハナシでしょ。で、何か?」にしかならないんですよ。ええ。

良いモノを作っているだけではダメですよ。売り方も考えなきゃ! っていうのは、100年前も現在も変わらない。その販路やマーケティングが劇的に変わってきているのは確かだけど、それに対応するためにアイディアを出す(出せない人は金で買う)必要があるという事情も変わっていない。ネットの時代でマーケティングが劇的に変わるのは確かだろう。だからといって、こうした変化が「貨幣経済を終わらせる」ってことにはならないんじゃないでしょうかね?

なんてことを考えながら、岡田斗司夫先生の新しいプロジェクト『オタキングex』のサイトをダラっと眺めていたわけですが……。

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『仮面ライダー』のナレーションぽく読むこと:
「岡田斗司夫はオタキングex社長である!
 彼は貨幣経済→評価経済社会へシフトするための拡張型組織・オタキングexを立ち上げた!
 exはエキスパンドすなわち拡張を意味し、「会社」「学校」「家族」の属性を併せ持つ組織なのだ
 オタキングex社長は、人類の苦痛0.3%の軽減目指して、今日もパソコンの前に張り付くのだ!」

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(オタキングex の社長日記より引用)

実は旧blogでこの大長編を読んでいたときに一番納得できなかったのが、この「貨幣経済社会から評価経済社会へのシフト」というハナシ。

「パラダイムシフトらしいから、今のパラダイムにどっぷり浸かっている人間には何がどう変わりつつあるのかが見えないんじゃね?」
「ていうか岡田先生がしきりに薦めている『FREE』を読めば、言ってることの真意もわかるんじゃないかなぁ」

と思い、大枚¥1900(前のエントリで¥1800って書いたけど、¥1890だから\1900ってのが正しいね)を出して『FREE』を買って、しこしこと読んだわけです。

「創造的かつ評価される方法で貢献する機会は、マズローがすべての願望の中で最上位に置いた自己実現にほかならず、それが仕事で叶えられることは少ない。ウェブの急成長は、疑いなく無償労働によってもたらされた。~~中略~~ウェブがそれらのツールを提供すると、突然に無料で交換される市場が生まれたのである」(251頁)

その通りだと思うけど、これがイコール非貨幣経済のことだというのであれば、ちょっと納得できないよなぁ。単に内容を理解できていないのかも知れないけど。ウェブ上の評判が非貨幣経済の中心になるというけど、それだけでお腹が膨れることはないでしょ。それに人の評価や信用だって、かなりの部分は「貨幣の多寡」で図ることができることだし。ロバート・フランクの『ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態』(ダイヤモンド社)って本によれば、アメリカでは個人の評価や信用の99%は金で判断されるそうだ。

いうまでもないことだけど、貨幣は完全に定量化されていて、どこでも誰とでも交換できる。そのシステムも安価で――『FREE』風に言うなら、各国の造幣局や為替市場のコストは、貨幣経済全体の規模から見ればタダのようなものだ――、いまのところ誰も困ったプレイヤーはいない。金持ちも貧乏人も、共産国家もバナナ共和国も貨幣経済というリングの上にのっている。

一方、評価経済はどうだろう。確かに『FREE』で言うように評価は定量化できるだろうけど、それを交換するとなると一旦貨幣に換えるしかないのでは? ここのところを気持ち良く説得してくれれば、すぐにも『FREE』信者になったんだけどなぁ。将来は全部電子マネーに移行するから、実体としての紙幣や貨幣はなくなるってことなら「そうかも知れないねぇ」とは思うけど。

結局、岡田先生が『FREE』と『オタキングex』に何でそこまで熱くなっているのかは良く理解できなかったわけです。だからといって『オタキングex』は悪い! ってハナシには全っ然ならないわけで、あれはあれで良いことだと思います。

邪推しようと思えばいくらでも邪推できるし、胡散臭いといえば胡散臭い。ただ、ハッキリしていることは、“社員”として参加するとしても、その損失は「月1万円=年間12万円」だけで、この損失さえ覚悟していれば、後は何をしてもいいんだし。『FREE』風に言うなら、「一番優良なスポーツクラブの会員は、会費だけ払って後は一切来ない会員だ」ってこと。何かをしたければすればいいし、黙ってニヤニヤ眺めていたければ眺めていればいい。金を払う価値ナシ! と判断すればいつでもやめられる。MIBに追い込まれたり、新撰組のように辞めるなら切腹ってこともない。

というわけで、手前の中で『オタキングex』の位置づけは、新たな形式の会社でもなく、貨幣経済→評価経済社会へシフトするための拡張型組織でもない、「ファンクラブex」ってことに決めました。毎月1万円払えばアイドルor教祖or講師……etcに会えるだけでなく、一緒におしゃべりをしたり仕事をしたりできるという、ファンクラブのエキスパンドすなわち拡張版であると。

なので、手前に経済的余裕ができたら、入社を申し込むことにします……ってそこ頃までに『オタンキングex』が存続していればいいけどなぁ。


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