2010年4月29日木曜日

立浪和義、「負けん気」:その3

星野監督に引き立てられ、新人の頃からショートのレギュラーに据えられ、以来18年に渡ってレギュラーを守り続けた立浪。彼の野球の原点は新人時代にあり、その理想は星野野球にあるようだ。

「プロ野球の監督、コーチは、好き嫌いに流されて選手を贔屓してはいけないが、『この選手にかけてやりたい』、『この選手ならきっとやってくれる』、そういう感情というか、直感で選手を起用したり、思いを注ぐことは勝利の鍵にもなるはずだ」
「野球は確率のスポーツであると同時に、確率的には少ない選択が勝利をもたらす場合もしばしばある。監督が、どの選手に運命を託し、戦う選択をするか。その心がファンの方々にも通じ、必死の思いで勝負に挑めるチームだったら、勝っても負けても、誇りを持って前に進んで行けるだろう」(237頁)

いまの中日でたとえれば、森野将彦選手をライトにコンバートして、堂上直倫選手をサードで使い続けるような感じになるのだろうか? こうした若手の抜擢はファンの受けこそ良いものの、若手に追い出される中堅、ベテランにとってはたまったものではない。

山本昌投手は、自伝『133キロ怪速球』でこのように語っている。

「『落合博満監督』としては、今も感謝している言葉がある」
「『年齢はグラウンドに立てば関係ない。ひとつでも多くのアウトをとれるやつを、オレは使う。力のあるやつが、このグラウンドに立つことができるんだ』」
「若い者にチャンスを与えたい、世代交代…。確かにそういう部分も必要なのだろうが、それはベテランには『死』と同義語だ。だけど、力で劣っていると思えたら、この世界はあきらめがつく。その違いが、僕たちの救いとなる」(147頁)

競争の結果、レギュラーの地位が奪われるのであれば納得するが、最初から競争もなく奪われるのは理不尽ということだ。

では、若手の抜擢によりレギュラーの地位を剥奪された中堅、ベテランはどうなるのか? 有無を言わせずトレードにより放逐する――これが星野監督のやり方だった。
(つづく)

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