2010年4月28日水曜日

立浪和義、「負けん気」:その2

立浪がレギュラーを喪うきっかけとなった、「三塁へのベースカバーが遅れ、三盗を許してしまったシーン」の回想は、以下のようなものだ。

「私は、引っ張ってくる強打者を迎えて、やや深めにポジションを移した。二塁ランナーの東出輝裕がスタートを切った。新井が強振した。空振り、三振。盗塁を察知して私は、新井の空振りを確認してすぐに前進し、ベースに入った。キャッチャー・谷繁の送球はやや低く、勢いよく前進した私はつんのめって捕る形になった」
「その体勢を見たためか、東出は二塁から三塁への盗塁だというのに、滑らずに立ったままベースに走り込んできた。捕球してすぐタッチに行ったが、通常とは違うそんな様相の中、空タッチになってしまった。それでツーアウト二塁、三塁。次のバッターにヒットを浴びて、同点に追いつかれた」
「私の動きが緩慢で、それで失点を許したような冷たい視線をどこからともなく感じた。打席に立ち、ファーストゴロに終わると、何も言われず代えられた」
「(えっ?) 私はギクシャクしたものを感じた。私自身はあのタッチプレーを、今でもミスとは思っていない。流れの中で起こったことだと考えている。だが、ベンチからは明らかにミスと映ったようだ。内心、釈然としなかった」
「だがまさか、それがレギュラーとして出場する現役生活最後の試合になるとは、まだ夢にも思わなかった」(173~174頁)

この話をどのように読むか。手前は、「プロは結果が全て。どう弁解しようが、ベースカバーが遅れてやすやすと三盗を許したのは、立浪の責任じゃないか?」と考えている。一方、落合博満監督はこのように回顧している。

「立浪が3割を打っていれば、代えづらかった。状態が上がってこなかったし、7月1日の広島戦で二塁走者が三盗をした際、立浪がサードベースに入りきれなかった時には考えさせられた部分もあった(翌2日から立浪はスタメン落ちしている)。前日(6月30日)に立浪は5打数5安打を放っている。でも、ウチは守りで失点を防いできた。まして両サイド(一塁・ウッズ、三塁・立浪)に爆弾を抱えてるワケだから…。それを見過ごして、そのままにしておくのは監督としての怠慢になる」(中京スポーツ:06年10月17日。落合監督の言葉を全て記録している素ン晴らしいサイト『落合語録』より引用)

ここで落合からスタメン落ちについてのフォローがあれば――星野のように怒鳴りつけるような形でもいいから、何らかの説明があれば――、立浪も少しは救われたのかもしれないが、あいにく落合は一人一人の選手をプロとして扱う(=結果だけを見て判断する)ので、スタメン落ちのフォローは一切しなかった。

レギュラーを剥奪された頃のことを、立浪は、「私は傷ついた。宣告もされずに代打専門にかわることなど、受け入れる気持ちにはれなかった」(176頁)と吐露している。
(つづく)

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