2010年3月4日木曜日

『街場の中国論』に一言以上いいたい:その3

昨日のあらすじ――華夷秩序の周縁国という立ち位置にある日本は、本質的に儒教国だったんだ! な、なんだってー!! Ω ΩΩ――

中国、朝鮮、日本の三国は本質的に儒教圏なんだから、欧州がEUになったように、日本も自然と儒教圏に統合されるのだよ! と主張しているわけなんですが、なんで今の日本がダメかというと……。

「アメリカン・グローバリズムは日本人には合いません。『オレが中心で、オレがオリジナルで、オレ的にオレはオレが好きだから、それでいいんだ』という自己正当化では日本人は立ちゆかない。グローバリズムのような『タフ』な思想でアメリカ人がやっていけるのは、キリスト教福音主義が『神』のサポートを担保しているからです。信仰の支えのないグローバリストなんて神経が持ちません」

これどこの“バカ右翼”だよ! 床屋政談としても陳腐……ってか、小林よしのりとかと同じこと言ってんじゃん。

「だから『儒教に還ろう』と僕がご提言申し上げているわけです。グローバリズムはもう止めて。かつて日本が理想的な治世をしていた時代に(そんなものはもちろん存在しないんですけれど)還ろう、と。こういう政治的目標の立て方が実はいちばん説得力があるんです。「未来をこれから築こう」じゃ、どうも元気が出ない。「(ありえない)過去に還ろう」と言い募っていると、そおうちに聴いているほうも「一度はそういうこともできたんだなあ」と勘違いして、うっかり理想が実現できたりする。そういうもんなんです。

これはねぇ……なんというか一フレーズごとに突っ込みどころがあるんですが、一言でいえば「無責任」ってことっすかねぇ。ガンガン会社経営やって実学もある大学教授とは思えないほどの、いかにもな“書生の論”って気がする。

てか、そんなあやふやな政治目的の実現しか、メリットがないってことかね?

「飢餓輸出とコピー品が得意な国」と組む経済的メリットってどこにあるの? 
技術移転して中国、朝鮮に安いコピー品つくられて、日本製品が世界市場から駆逐されるだけでは?

「核ミサイルとすぐ沈む潜水艦と旧世代の飛行機と人海戦術が自慢の軍隊」と組む軍事的メリットってどこにあるの?
仮に中国が攻めてきても、自衛隊だけで十分撃退できる。怖いのは核兵器の先制使用だけど、全てのミサイルを日本だけに撃ち込むことはないので(対アメリカ、ロシア用に相当数のミサイルを温存する必要がある)、被害甚大といえど無抵抗のまま皇居に五星紅旗を立てられることはないだろう。で、そんな正式な軍隊を持たない日本より弱い国と組んで、日本の防衛が成り立つのかね? 

東アジア共同体の賛成論者が信用できないのは、「日本にとって明らかなメリット」を提示できないのに、むやみやたらに「中国、韓国と手を組むべき」と主張することなんだよなぁ。手前だって、東アジア共同体を成立させることで「日本にとって明らかなメリット」があるのであれば、諸手を挙げて賛成するっちゅうの(小沢一郎風)。そもそも、みんな仲良くってことならフィリピン、インドネシア、ベトナムはもちろん、アメリカやロシアをハブったらダメじゃん。

と、第2講(~67頁)までにこれだけ突っ込みどころがあるわけなんですが、もちろん突っ込みどころはここまでに止まらず、同じようなペースで第10講(~210頁)まであるわけなんですよ。まぁ、あとがきで瑕疵がたくさんあることを断っているので、一々指摘しても仕方ないんだけどね。

それなのにどうして顔を真っ赤にしてこんなことを書いているかと言うと、直後に読んだ加藤徹の『貝と羊の日本人』に感動したからなんですよ。

『貝と羊の日本人』の主張って『街場の中国論』とさして変わらない――冷静に現代中国を見つめようぜ! 東アジア共同体、移民受入れも悪くないかもな――んだけど、切り口や論の立て方があまりに素晴らしくて(よくよく読めば大雑把)、「いやぁ、いい本読んだ」って感動とともに、「なんでこの本を読む前に『街場の中国論』なんぞを読んでしまったのか! ああ時間を無駄にしたわい!」と、猛烈に腹が立ってしまったからなんですよ。

スーパーの羊羹を食べた後に、ちゃんとした和菓子屋の羊羹をたべると、ついついスーパーの羊羹に悪態をつきたくなるもんじゃないっすか。まぁ、そんな気分だったということ。

で、ついカッとなって文句をいったわけです。もちろん反省はしてません。

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